雑記 Diary2009/10-2

涼宮ハルヒの憂鬱」"あらためて"放送は終了しましたが、ネタバレレベルは先月に同じです
台詞の記述はアニメ版を優先します。引用に付けたタイムコードはyoutubeにupされた動画のものを見て付けていますが、あまり精度はありません。

レベル0
涼宮ハルヒの憂鬱」について全くしらない人向け。原作小説もDVDも前回放送も知らない人。
レベル1
前回youtubeにupされている回まで視聴した人向け。
レベル2
文章が書かれている時点でupされている回を視聴した人向け。
レベル3
前回放送分(いわゆる一期:現在DVDになっている分)を視聴した人向け。「『七夕』って何?」
レベル4
原作「憤慨」まで読んだ人向け「長門さんの小説っていいよね」
レベル5
原作「分裂」まで読んだ人向け「『わたぁし』って誰?」

28話とっくに配信終了
ネタバレ度2 28話まで見た人 ただし消失の匂わせがある為、.4.にはご注意ください。
28話「サムデイ イン ザ レイン

*今までは引用時は同じカット内の台詞をすべて書いていましたが、今回はやたら長回しが多いので、カット内にやり取りがあった場合は台詞を適宜省略して引用します。

.1.

 冬の学校内の描写が素晴らしい。
今回はレイアウトが緻密だし、音声などにもいろいろ仕掛けがありますが、演出ミスなのか狙いがあるのかわからない描写もあります。やる夫ばりに「こまけえこたあいいんだよ」と思っていたものの、ある程度解釈可能なので深読み覚悟で書きます。
 観客が作品に対してできる事が作り手の意図を読み取る事だけであるのなら表現なんて不要です。テーマを最大の書体でプリントアウトして家の前に展示しておくなり、駅前で大声で叫んでいればよい事じゃんか!と受け売りのいいわけをしておきます。え?なにをいまさら?それどころか原作者の「おまえはその程度しかよめねえのか?がっかりだぜ」みたいな声がきこえてくるんですけどねえ。空耳だろって?
ではやる夫とは逆に

細かいことが気になるハルヒ
と言う事で。今回は、

その時、俺は古泉につきあってTRPGをやっているところであり、朝比奈さんはほとんど普段着となりつつあるメイド衣装で電気ストーブに手をかざし、長門はSFの新刊ハードカバーを指と目だけを動かして読んでいた。 (消失p.8)

と原作に一行だけ記述のある電気ストーブに関するアニメ版オリジナルストーリーです。なにも超常的なことが起きない、SOS団の日常を描く回のように思えますが、奇妙な描写も多くあります。
 まず重要なのが、キョンが見ていないSOS団の姿が描かれる唯一の回だという事です。
冒頭、キョンが顔を上げて(00;02;45)からキョンが文芸部室を出るまで(00;06;00)と、キョンが帰ってきた後ハルヒが撮影しているファインダ内の映像が挿入された後(00;18;18)から、ラストのハルヒのあっかんベーのアップまでを除いてはずっとロングぎみです。冒頭の4人の真上からの俯瞰ショット(00;02;14~00;02;24)に加え、ハルヒが入ってくるとハルヒまで真上からのショットになります(00;04;08)。文芸部室内は客観というより、放置カメラによる撮りっぱなしにみえます。カメラは室内の隅2箇所と本棚の奥にあるように見えます。キョンがいないときの文芸部室内はこの三つのアングルの切り返しだけで表現されています。
 文芸部室内の映像は緑カブリしており、蛍光灯下であることを表現しています。同様の色設定は「エンドレスエイト」の深夜ミーティングが印象的でした。ただ、屋外を歩くキョン、谷口、国木田まで緑っぽいのはちょっとどうかと思いますが、曇天で青っぽくなったのだと解釈しておきます。
 ほかにもキョンが会話の途中でカメラのほうを向いてモノローグするカットが3つあります
この部屋にいる時点で、暇でない奴などいないような気がするが(00;05;03)
そりゃそうだろうなあ、高校の映画本編中のCMじゃあ、あまりに局地的すぎる、よくスポンサーになってくれたものだ(00;11;01)
どうやら半年もあれば、クラスメイトが俺の立場を正しく認識するのに充分なようだった(00;15;12)
 同様のカットは溜息Ⅰ(00;05;37)にもありますが、今回ほどはっきりカメラを見ているわけではありません。
見られている事を意識するのはキョンだけではなく、長門もそうです。長門は朝比奈さんが着替え(させられ)るたびに本棚奥のカメラ前に立ち、視聴者の視線をさえぎります。溜息Ⅰ(朝比奈さんどうぞぉ00;08:15)で長門にお茶を淹れてあげる朝比奈さんの表情とともに、日常モードでの二人の微妙な関係が垣間見られますが、長門とキョンだけが異世界の視線を意識しているという、「消失」を予感させる演出だと考えます。
 他には長門と比べて朝比奈さんをかばおうともせずハルヒに古泉君は副団長(00;15;16)と言われて肩をそびやかす古泉の小物ぶりが・・・なんてのはどこの感想ブログにもありますのでパスします。
 どう考えてもヘンなのが音声。
この作品の環境音は丁寧にいれられていますが、今回、小さなレベルで文芸部室の背景に入れられたそれは奇妙です。
op開け(00;02;05)では運動部の練習らしいいちに、いちにや吹奏楽部の楽器の音ですし、電器店に向かうキョンをハルヒが窓から見ているカット(00;06;18)では階段か廊下を歩く足音なのですが、ハルヒたちが撮影に出かけてしまうと、(00;11;47)あめんぼあかいなあいうえおなどと発声練習が始まり、だんだん悪乗りしだします。歌ったり台詞を読んでいる(というよりTV番組の名台詞のパロディー)ようなので、演劇部なのか、または放送部が放送劇の練習をしているのかなと思っていると、電車に乗っているキョンの映像が挿入された後(00;14;02)はユキちゃん今日もセクシーだねえところでもう冬やねと漫才のラジオ番組風。長門が画面左側のラジカセを聞いているとも思いがたいのですが、この音声が何であれ「もうすぐクリスマスじゃないこれから(ヒグマ鍋の)ヒグマの役やるわだからあんた鍋の役やってという”ユキちゃん”の言葉から、長門有希の心象を表現していると考えてよいのではないかと思います。長門の相方の朝倉は有機生命体の死の概念がわからないと言っていたのに、600年の夏休みでヒトの心を学んだのか、それとも元々の実装の違いなのか、具と鍋に置き換えた生々しい恋愛感情の表出。このカット尻で長門が初めて顔を上げて窓のほうを見ます。次に校舎内で撮影するハルヒ達を鶴屋さんが訪ねるカットの音声ハイホー ハイホーは一体なんなのでしょうか?これ以降、キョンが文芸部室に帰ってきてからは奇妙な環境音は入りません。部室内を異空間にしていたのは孤独な長門の心なのでしょう。キョンが眠ってしまうと部室には静かな雨音と長門がページを繰る音のみが流れます。

.2.

 さて、ここからは超深読み覚悟モード。
 冒頭、ストーブを取って来いとハルヒに言われたキョンは
おまえ、俺が毎日往復してる山道をもう一回降りて、しかも電車で2駅かかる電気店まで行ってから、おまけに荷物かかえてまたここまで戻ってこいって言うのか(00;04;40)と言います。同じ商店街へ行き荷物を持って帰り、翌日に持って登校した溜息Ⅰとの関係が気になりますが、
山を下った俺たちは、私鉄のローカル線に乗り、3駅ほど移動した(溜息Ⅰ(00;20;04)」という列車内でのナレーションと矛盾します。2駅なのか3駅なのか?後者は原作どおりなのですが、どちらも脚本は原作者です。今期新作は原作の描写至上主義ではなく、アニメ版の矛盾にあわせて改変を行っている箇所もあります。例えば、「笹の葉ラプソディー」原作では朝比奈さんのメイド服は夏服(涼宮ハルヒちゃんの憂鬱漫画版2巻p.1~ とアニメ版25話の衣替えはそのパロディー)なのですが、時系列でのその次の回「ミステリックサイン」では朝比奈さんは冬服のままです。原作に記述がない為のミスだろうと思うのですが、そのおかげで「笹の葉ラプソディー」でも朝比奈さんは冬服のままキョンに熱いお茶を淹れて、キョン一人が暑がる描写が強調されています。一体2駅というのは原作者の勘違いなのかどうなのか。
 もう一点は、ストーブを抱えたキョンが帰ってきて下校中の谷口、国木田と出会うカットです。
 谷口よおキョン。なにやってんだこんな所で(00;15;02)の背景は憂鬱Ⅴそろそろ長門の住んでるマンションだな(00;00;31)と同じ場所のはずなんですが、奥に憂鬱Ⅴでは見えていた長門のマンションが見えません。モデルになっている風景は甲陽園駅前なのですが、この場所が設定上少なくとも駅と高校の間になければキョンと谷口達が会えませんし、奥のほうに長門のマンションがなければ、キョンが赤い自転車を置いている駐輪場は前方右側(憂鬱Ⅰ幼稚園のクリスマスイベントに現れたサンタはニセサンタだと理解していたし(00;00;21)でキョンが歩いて渡る横断歩道が奥に見えています)ですが、長門のマンションと駅の中間に駐輪場が無ければ、「笹の葉ラプソディー」で長門のマンションからの帰りにキョンが駅まで朝比奈さんを送りに来たとき、自転車をベンチの前に停めている描写と矛盾します。横断歩道の右に見えている自動販売機は笹の葉ラプソディー/朝比奈さんごめんなさい、私その、実はよくわかっていないんです(00;20;;22)や溜息Ⅲ/古泉彼女なら協力してくれるでしょう(00;18;57) でも写っています。google map ではこのあたりです。「サムデイ」の背景は、憂鬱Ⅴより実際の風景に近い事がおわかりでしょう。
 さて、この二点は別に脚本家(と言っても原作者)や背景を描いた美術さんのミスだと考えれば済む事かもしれません。実際、今期放送を見るまではそう思っていました。しかし今回、以下の様にかんがえると面白いということに気付きました。
 前者の、駅の数に関しては、溜息Ⅰでは電車(おそらく「光陽線」とでもいうのでしょう)で終点(同様に「祝川」でしょうか)まで行き、祝川商店街に入ります。帰りは3人とも電車に乗って帰ります。キョンは光陽園駅近くの駐輪場に自転車を停めています(憂鬱Ⅰなど)し、ハルヒも溜息Ⅲ(00;18;36)では光陽園駅からスキップして帰りますので、やはり光陽園駅で降りたのしょう。
しかし、朝比奈さんは笹の葉ラプソディー(00;21;17)では光陽園駅から電車で帰っています。となると、朝比奈さんのこの時代の家は祝川(?)と光陽園の間にある事になります。実際の甲陽線では夙川駅と甲陽園駅との間には苦楽園口駅しかありません。実際はサムデイでキョンが言うとおり甲陽園から2駅しかないのですが、朝比奈さんの最寄り駅はもう一つの架空の駅だっだと考えたらどうでしょう。
 後者もまた、長門のマンションは画面内にないほうが実際の風景に近いのです。つまり、サムデイでは朝比奈さんの最寄り駅と長門のマンションが画面から消し去られていて、私たちの現実に近くなっていると考えられるのです。
 ハルヒ達の住んでいる世界より現実に近い世界から帰って部室で眠りについたキョンですが、目覚めてハルヒと坂を下りたときは、駅前には長門のマンションがあり、光陽線には朝比奈さんの降りる駅があったのかもしれません。
 もう一箇所、これは当方のもっているyoutube動画画質での問題なのかもしれませんが、今回、古泉が座っている席の後ろ側の黒板に写真が貼ってあります。(00,03,22)で5枚がアップになります。孤島症候群で撮影した写真でしょう、水着は「エンドレスエイト」19話で着ていたものと同じです。(00;05;18)で全体像が見えますが、右上に貼ってある1枚は薄暗い写真で奇妙です。キョンが帰ってきてストーブにあたるカット(00;18;48)では右上の写真が見えません。(00;21;00)ではちゃんと6枚はってあるのですが、う~ん。気になります。*4)

.3.

 さて、再度長門の待つ文芸部室に戻って見て行きたいと思います。
部室内に自分がヒグマ、相方に鍋を演じて欲しいという”ユキちゃん”の漫才の音声が流れるカット尻、長門は顔をあげて窓の外を見ます。カットバックして駅前でキョンが谷口、国木田と話すカットになります。カット尻では雨が降り出し、キョンは天気予報じゃあ降水確率10パーって言ってやがったのに(00;15;36)と嘆きます。普通の物語なら、長門が雨の気配に気付いたという描写ですが……
 次のカットは連絡通路を歩くハルヒ、朝比奈さんと古泉。文芸部室からの俯瞰ショットで、恐らくは長門の見た目ショットです。カット尻でキョン君大丈夫かな朝比奈さんが言うと、次のカットではキョンが朝比奈さんの淹れてくれるお茶にありついてと言い、次のカットは再び文芸部室。鶴屋さんみくるいる?ってあれ、長門っちだけ?朝比奈さんの居場所を聞かれた長門は中館を指差します。なぜか3カットだけ朝比奈さんが強調されるのです。再び坂を登るキョンにカットバック。次は中館で撮影する三人。フレームの中心はハルヒで、やはり観測者長門の見た目ショットである事が暗示されます。鶴屋さんの姿が窓のさんに遮られてしまったりして、機械的なショットである事が強調されています。無音の室内の長門の次は本館玄関に帰ってきて靴を履き替えるキョン。走ってフレームインする鶴屋さんは、よく見ると靴を既に履き替えています。キョンが部室に入り、長門にハルヒ達は?と聞くと長門は首をかしげて知らないふりをします。
2カット、体育館内での撮影をビデオカメラのファインダ内映像に切り替え。レフ板のバレと手ブレ。右下の時刻表示と上の電池残量やタイマ表示を見比べると16:10から7分間撮りっぱなし(!)のようで、ハルヒの見事なバトンさばきと撮影技術の酷さが対比されます。次にハルヒがこうするのよ、こう。と古泉の撮影でバトンを投げるカットでは、ハルヒの撮影よりカメラが安定しています。なぜハルヒは、こんなにまでなんでも出来るのにモノづくりが苦手なんだろうなあ?と思うところですね。
 部室のシーンになって、キョンがストーブを取り出し、プラグをコンセントに挿し、スイッチを入れる動きの細かい事!
 自分がストーブにあたっていても、「長門、さむくないか?」なんて言わないのがキョンです。そして、そのまま眠ってしまいますが、再びキョン主観でない眠るキョンのアップ(00;19;30)。眠っているキョンの放置カメラショットで切り返しますが、2番目のショットでは後ろのハンガーラックに掛けられている朝比奈さんのコートに、キョンがしていたピンクのマフラーが見えます。長門が本を持ったまま席を立ちます。
 部室の窓にフェードイン。眠っているキョンにハルヒの影がかかっています。キョンが目を覚ましたのに気付いて驚くハルヒ。机の上にデジタルスチルカメラとビデオカメラがあります。入り口側からはこちらには来れない(キョンも、朝比奈さん着替え時の古泉も奥側から回りこんだ)ので、あえてキョンの顔が見える側に回りこんでからカメラを机の上に置き、カーディガンを脱ぎ、そして掛けたという事。
 なんでハルヒがこんなに驚いているかと言うと、原作既読者で1期放送順で視聴して、予告編をよく聞いていた方はご存知のとおり。ハルヒが寝ている顔にイタズラ書きというキョンの指摘が幼稚な事に思えるような事をしたからです。これは「消失」の伏線で、「憂鬱Ⅵ」ラストでハルヒの目を覚まさせるためにキョンがした事の逆です。
 1期だけ見ているとハルヒがキョンにキスというのはかなり唐突に思えますが、溜息Ⅳでイツキ(キョン)とミクル(ハルヒ)のキスシーン撮影を止められてあたしは団長で、監督で(00;14;15)」の後の5秒間の言葉にならない激しい想いを、そしてその翌日この映画は絶対成功させよう(00;22;05)」とハルヒの気持ちを理解しない激励*)をされてしまった為に、そのさらに翌日雨を降らせてしまった事を思えば、憂鬱Ⅵのキスシーンがハルヒにとってどれだけ重要だったかがわかります。
 キョンがもう一枚のカーディガンはだれのものかと思って机を見ると、長門の読んでいた本。いつも読んでいた本を片付けないなんて事はないのに、もしや、と思うがすぐにハンガーラックのほうを向いて朝比奈さんのメイド服を見ます。もしかしたら長門がかけてくれたのか、なんて想像したくない。長門の誠意はキョンには重過ぎるからです。
 ハルヒに促され自分の椅子にカーディガンを掛けるキョン。朝比奈さんのものだと思っているならこんな事はしないでしょう。翌日に朝比奈さんの教室に行って鶴屋さんのハンカチといっしょにカーディガンを返すでしょうから。
 さて、もう一枚のカーディガンが誰の物かはハルヒは確実に知っているとか、キョンがカーディガンを椅子に掛けるのをハルヒは見ているのに何も言わないとか、もう一枚のカーディガンが朝比奈さんのものでないことにキョンが気付いただろう事もハルヒは理解しているだろうとか、最後のツンデレ相合傘とかはガラでもないので割愛します。私などよりtttのミハルさん(一部R-18注意!)が既に描いていらっしゃいますし。

.4.

 さて、ふりかえると、ヘンなカットワークがあることに気付きます。
キョンが帰ってきて眠ってしまうシーンです。

  1. 疲れた(00;19;21)とつぶやき
  2. キョンの目がうつろになり
  3. 本を読んでいる長門が徐々にフォーカスアウト→フェードアウト。
  4. 眠っているキョンの横顔。
  5. 入り口側カメラでの俯瞰、眠るキョンと読書する長門
  6. 奥側カメラでの俯瞰→長門が本を持って立つ
  7. フェードイン→部室の窓
  8. 目を覚ますキョンのアップ
 という順なのですが、これ、おかしくないですか?
 4と8は同じポジションですから、もし4が長門がカーディガンを掛ける事を示唆しているとすると、4と8のキョンのアップがそのまま対応するわけですから、4は6の後になるべきでしょう。つまり、
 1.2.3.キョンが眠る→5.眠っているキョンと読書する長門→6.長門が立つ→4.眠っているキョンのアップ→(ここで長門がカーディガンを掛けた事を省略)→7.部室の窓(時間経過)→(ここでハルヒがカーディガンを掛けた事を省略)→8.目をさますキョンのアップ
とすれば、「なあるほど、長門とハルヒがカーディガンを掛けたんだな」と解りやすくなるのに、なぜ眠っているキョンのアップを先にしたのでしょう。*3)
 ここで、消失とは憂鬱の逆であり、サムデイは消失の前哨であることに気を配ると別の解釈ができます。
 憂鬱ではハルヒは「白雪姫」「sleeping beauty」であり、キョンは王子でした。
 憂鬱ではキョンがハルヒにキスして目覚めさせます。
 サムデイではハルヒ(姫)がキョン(王子)にキスして目覚めさせます。
 8のキョンのアップが意味しているものはカーディガンではなく「ハルヒ(姫)のキス」だと考えます。すると、4の眠っているキョン(王子)のアップは何を意味しているのでしょう。
 8では既にハルヒはキョンにキスしています。だから目を覚ますのです。
 4でも既に何かが済んでいると考えます。だから眠ってしまったのでしょう
 なぜキョン(王子)は眠ってしまったのでしょう。ねむり姫を眠らせたのは魔法使いでした。とすれば、キョン王子は悪い魔法使い長門に眠りにつかされたのです。考える事はなかろう、その少年(イツキ=キョン 引用者注)の意思を奪ってしまえば良いではないか。仄聞したところ、君にはそのような能力があるはずだが……朝比奈ミクルの冒険00;21;01)*2)
 いま一つです。なぜこの日、降水確率10パーなのに雨が降ったのでしょう。
「そりゃ簡単だ、ストーブを取りに行かせたものの、ハルヒは不安だったんだよ。キョンに早く帰ってきて欲しかったのさ。それに雨が降って得をしてるじゃないか、相合傘で帰れてさ」と言いたくなります。
 しかし雨を降らせる能力を持っているのはハルヒだけではありません。
雨を降らせてくれないか(略)できなくはない、ただし推奨はできない(退屈00;07;36)」
 また雨が降ってほしかったのもハルヒだけではありません。
 長門が本を読んでいる部屋(?)でキョンが眠っていた事が、以前にもあります。憂鬱Ⅲの午後の不思議探索です。やはりハルヒに、こちらは電話ですが起こされます。長門にとってこの日が特別なものだった事は憂鬱Ⅵで語られます。それもハルヒが"sleeping beauty"だと明かす直前に。
また、図書館に(憂鬱Ⅵ00;14;23)」
 ハルヒ達のいない文芸部室が憂鬱Ⅲの図書館の再現だとすると、その前の雨がふりだしてから「朝比奈さん」が連呼される3カットは憂鬱Ⅲ午前の祝川公園での朝比奈さんの未来人告白の再現なのでしょうか。朝比奈さんを訪ねる鶴屋さんのカットの音声ハイホー ハイホーは、白雪姫(ディズニー版)の七人のこびとなのでしょうか。はたして雨を降らせたのはハルヒなのか長門なのか。少なくとも、これからヒグマの役やるわだからあんた鍋の役やってという”ユキちゃん”の漫才が流れる文芸部室で長門が外を見ると雨が降り出すカットは、長門がハルヒの能力を感知したとも、長門が雨を降らせたと解釈する事もできるという事だけは指摘できます。

.5.

 「サムデイ イン ザ レイン」は消失の前フリとしてみる事ができる事は以前にも指摘してきました。今回、何回も視聴してみてサムデイが濃厚に消失の香りを漂わせる作品である事が再確認できました。さて来春、消失が公開される事が決定しましたが、さらに消失のダークさが際立ってきたものと思います。

218 名前: イラストに騙された名無しさん [sage] 投稿日: 2009/10/20(火)22:54:55 ID:nq/b8qWM
ながるん的には、「公式ストーリーとしてあくまでも明るくハッピーな」ハルヒ世界を
表に出しつつ、裏でハルヒの気まぐれによって悲惨な死を遂げた一般人の姿を
「行間が読める」読者に垣間見せる。

みたいな事をやってる自分を想像してハァハァしてそうな気がするんだが 谷川流 257より

同感です。(まあ「自分を想像してハァハァ」は酷いですが 追記)
 さて、あと2.3点書きたいことが残っています。もうしばらくおつきあいください。
それでは。

*) ^ 溜息Ⅴでハルヒが朝比奈さんのかわりにキョンをメガホンで何回も叩いているのも、この映画は絶対成功させよう(溜息Ⅳ00;22;05)では不満だったからでしょう。

*2) ^ このシャミセンの台詞は誰に向かって言っているのでしょうか。劇中劇「朝比奈ミクルの冒険」の中で実際に台詞どおりに行動するのはユキなのですが、シャミセンは終始朝比奈さんに向かって喋っていますし、イツキ=キョンを能力で眠らせるのは「笹の葉ラプソディー」でも「陰謀」でも朝比奈さんです。長門は朝比奈さんについて君にはそのような能力がある仄聞していてもおかしくはありません。今のは腹話術(追記)
*3) ^ 5.と6.の間に不連続があります。5.では机の上に乗っていた長門の湯呑みが6.では乗っていません。キョンの湯呑みは(おまけに荷物抱えてここまで戻って来いって言うのか00;04;52)で朝比奈さんが片付け、古泉の湯呑みは(朝比奈さん寒いですう、それに恥ずかしいですよお00;08;38)で無くなっています。おそらくこの時点でハルヒの湯呑みも片付けられているのでしょう。長門の湯呑みだけが、ハルヒが撮影の為に机を動かした後も5.までずっと机の前に置かれ続けているのです。単なる不注意による不一致ではありません。5.と6の間に長門が片付けたのでしょうか。ただ謎なのは5.と6.の間で音声(雨音)が途切れていないのです。長門がここで能力を使った?ひょっとして、これは消失世界の文芸部PCにあたる小道具なのでしょうか?(消失p.158)(09/11/13追記)
*4) ^ きーぼー堂様のブログ記事「涼宮ハルヒの消失 フィルムブックマーク紹介 その2」によりますと、「孤島症候群前編」初日の花火の写真のようです。「孤島症候群」を見直すと、ちゃんと朝比奈さんがデジカメを持っているカット(00;16;21)もありました。

ネタバレ度2 今期28話を見た人。「陰謀」の内容をあつかっていますが、この程度ならネタバレにならないかも。気になる人は飛ばしてください。

某掲示板にこんな書き込みがありました。

894 名前: イラストに騙された名無しさん [sage] 投稿日: 2009/10/12(月)22:14:17 ID:tLEwK1dv
 長門は時空理論について「いずれわかる」と言ってたが
 長門がわかるのは同期した消失までで
 消失以降の未来は知らないはず
 「いずれわかる」はひょっとしたら、嘘? 谷川流 256より

 このいずれわかるは「笹の葉ラプソディー(00;22;41)」のラストでしょう。これは多分、嘘ではないと思います。
陰謀」ラストで、キョンは朝比奈さん(大)から説明を聞いて理解しています。ある程度の説明はモノローグされていますが、読者に対しては説明できていないように思えるのは、長門が憂鬱Ⅳで言うように言語では概念を説明できないし、理解もできない(00;21;16)」とある通り、キョンには理解できるが読者には説明できないということだと思います。ここでTPDDの概念をキョンが理解したということは今後の展開で生かされる可能性があります。
 「笹の葉ラプソディー」の 朝比奈さん(大)この時の私ってこんなだったのね(00;09;06)」で朝比奈さん(大)は朝比奈さん(小)からTPDDを奪い取りますが、 以前書いたとおりこのTPDDは朝比奈さん(大)指きった(00;10;18)」でキョンに渡され、原作では××(ネタバレ抑止)でおそらくは使っています。
 その××で朝比奈さん(大)がキョンから返してもらうかのような描写があるので断言はできませんが、もしここで返してもらっていなければどうでしょう。「陰謀」でキョンが直感的に理解できるのが脳内にTPDDを持っているためだとしたら?
 また、時間旅行から帰ってくるときにはTPDDを持っている人物がp.33で途中下車してしまいます(ネタバレ抑止)。ここではキョンのTPDDを使って時間移動したのではないかとも考えられます。
 「驚愕」以降に、

よしハルヒ、俺は行くぞ。すべての決着をつけるために、4年前に。

なんていう燃える展開になるのかもしれません。
 上記を書く為に「陰謀」をパラパラと読み返していると、
ねえ、キョン。もしお宝を手に入れたら、あんたどうする。(略)大切に保管しておいて、そのうちまたどこかに埋めるわけ。自分の子孫あてに宝の地図を書くのって、お金に換えられないくらい楽しそうだとは思わない?(p.244)
などとハルヒが言いますが、キョンが同意しないので朝比奈さんに同意を求めると、
そ……そうですね。いえ、ちが……、ええと、そのほうがかえって喜ばれるような……(略)
いえ、絶対出てくるわよ。たからもの。私には解るの。(p.245)
などと結構重要な会話がありますね。宝はハルヒに見つからないほうが未来の為だとか、なんでこんなに○○○○○○とハルヒがおんなじ事を考えるの?とか。
 キョンはp.380あたりで別の形で納得するので、読者は誤魔化されてしまいます。
 みんなつまらんという「陰謀」ですが、結構重要なのではないかと思っています。

おまけ
 これは甲陽線車内から撮影した動画です。youtubeで発見しました。ストーブを部室に持ってゆくキョンになったつもりで見ると楽しいですよ。
エンドレスエイト16話(00;20;04)」で雨宿りする鉄橋(00;02;48)や「笹の葉ラプソディー」でハルヒが乗り越えた門(00;03;19)が、これはすごくわかりづらいですが見えます。
憂鬱Ⅴ」でハルヒが告白した踏み切り(00;03;34)を超えると長門のマンションも見えます。「エンドレスエイト19話」で雨宿りしていたパン屋さん(00;04;30)も画面右奥に見えてきます。甲陽園駅に到着すると、「サムデイ イン ザ レイン」で駅ホームにいた女子高校生の制服と同じネクタイをした夏服の高校生が歩いてきます。同じ制服の生徒が「ライブアライブ」で校訓を書いた石碑の前でクレープを食べていたのを思い出される方も多いでしょう。「消失」では、ハルヒがこの制服を着ることになります。
 終始画面の奥にとんがった山が見えていますが、これは多分「エンドレスエイト」アニメ版(原作では高校の裏山)で蝉取りをしたり「溜息」でミクルビームのロケをした森林公園がふもとにある甲山でしょう。聖地巡礼サイトによると、この山は「陰謀」で登る、通称「鶴屋山」のモデルでもあるようです。
この動画では、溜息Ⅰ(00;24;40)で降りる駅のモデルになっている夙川駅が見えます。