雑記 Diary2008/08
卵の殻を破らねば 雛鳥は生まれずに死んで行く「少女革命ウテナ」と「新世紀エヴァンゲリオン」(以降重度ネタバレ注意)には、「敷かれたレールに乗っているだけでは生きてすらゆけない」という共通項があります。
我らが雛だ 卵は世界だ
世界の殻を破らねば 我らは生まれず死んで行く
世界の殻を破壊せよ!
世界を革命するために!
オトナになる為に父が仕込んだ、と偽装された*)世界のシステム。しかしこれは父が妄念のままに子供(主人公)をすら犠牲にして、死んだまま生きる/生きたまま死ぬ為の装置でした。
世界を規定しているデュエル/使徒との戦いに勝利しさえすれば、成長とオトナへの切符が手に入るはずが、勝ったものは力と意思を奪われ、妄念の道具と成り果ててしまう。
それ故、まだ”生まれ”てもいない”雛”が”世界を革命する”つまりシステムそのものを打ち破る事でやっと生きながらえる事ができるのです。
もう、子供の成長を見守る父親などというモノは物語の中にすらいないのかもしれません。
ところで、「涼宮ハルヒの憂鬱」シリーズでは、「成長」が偽装されています。TV版の「涼宮ハルヒの憂鬱」ってどんな話?といえば「友達できてよかったね、不思議ちゃん」という話だと一言で言えるのですが、一見成長しているように見えるハルヒの影に、暗い情念を燃え上がらせている(これもある意味で成長ではあるのですが)人物がいることに、原作を読んだ方ならお気づきでしょう。そしてまた、ハルヒ自身すら自らの成長に満足してはいないことも示されています
ハルヒが世界を書き換えるきっかけとなったのは、小学6年生のときに野球場に行った事がきっかけです。
彼女は、自分が五万人の内の一人でしかなく、しかもその全員が自分が
興味なかった競技を見つめている事におののきました。初めて彼女は世界の中で自分が何者でもない事を知ったのです。
彼女が閉鎖空間から帰って、初めて行ったのは草野球大会に出場して勝つという事でした。
閉鎖空間でキョンが言った
世界はお前を中心に動いていたと言ってもいい。みんな、お前を特別な存在だと考えていて、実際そのように行動してた。お前が知らないだけで、世界は確実に面白い方向に進んでいたんだよを確かめる為だったのかもしれません。
それゆえ長門の能力で試合に勝利したあとの
あんたは、それでいいの?(原作の台詞です。TV版では
あんたがそれでいいなら、まあ いいわ)には、「世界の中心ってこんなもの?」のニュアンスがあります。
そのあとも、彼女は、前の席のキョンを引き倒して後頭部を打ち付け、
気がついた!と叫んで唾を飛ばす(カメラにかかる水滴が描写されています)デムパ娘だったとは思えないほどまともな高校生として「成長」していきますが、それは単にキョンの希望にあわせただけともいえます。
実際のところ、本来「成長」に直面しなくてはならないのはむしろ主人公であるキョンのほうである事は原作を読まれた方には書くまでもない事でしょう。(続きます)
途中ですが追記します
ビルドゥングスロマンがどういうものなのかはよく解りませんが、冒険譚の基本形が「老賢者(師匠)に導かれた少年が旅の中で成長し、最後の敵を倒す(父殺し)」だとするならば、「エヴァ」や「ウテナ」には「師」が存在せず、代わりに父が最初から居座っている物語だと言えるでしょう。
勇者初心者がいきなりラスボスのダンジョンに入って魔王と戦う、しかも剣も鎧も魔王が戯れに与えた物だという構造です。あれ?巨人の星だってそうじゃん。俺は野球人形だ
カヲル君は父さんと同じだ、僕を裏切ったんだ
確かに同じです。
もしかすると、日本のこの手の物語が元々壊れていて、「エヴァ」はそれをもっとも先鋭的に示したに過ぎないのかもしれません。
もう一つ追記:お恥ずかしい限りですが、TVで「魔笛」を途中までですが、始めて見ました。オペラなんて「夕鶴」しか知らなかったのですが。途中で善悪が反転する成長物語。え、あれれ??それなんて「海のトリトン」「ザンボット3」?
*)ウテナでは「父」は隠されていますから、完全に同型だとは言えないですね。ファンサイトを巡ってみても、父母の葬式の夜に現れて薔薇の王子と薔薇の花嫁の伝説を語る二人が、薔薇の棺に入っている者と同じだとは思っていない人が多い事に驚かされます。
「編集長一直線(涼宮ハルヒの憤慨 収録)」にある小説内小説、朝比奈みくるの童話(p.76-83)を解釈してみました。(ネタバレ度高)
番号は原作の文章ページ側左上に振ってある番号に対応します。
- 三年前の時間平面に、(朝比奈みくるは)TFEI群の監視下にある涼宮ハルヒを発見した。
程なくして時間断層を作り出したのが彼女である事を知った。自らが何者でもない事を彼女が知った為に、ありきたりな小さな幸せではない何かを求めて彼女はこの時空を作り出したのだと言う。
望んだ世界を作り出した筈のハルヒだったが、彼女は退屈していた - 同じ頃、朝比奈みくるは、この時空の重要な鍵となるキョンを発見した。
彼をハルヒに会わせなくてはならないと感じたみくるは、鶴屋さんのサポートによって北高生になると、キョンを三年前の七夕の日の東中学まで連れ出した。(笹の葉ラプソディー)
だが、三年を経過して元の時空まで戻っても、ハルヒの態度に変化は見られなかった。
またキョンも「鍵」としての自身を自覚する事は無かった。
みくるは秋まで待ったが、キョンの態度は変化しない。
もっと大きな事件を起こさなくては駄目なのかと考えているうち、12月18日がやってきた。
- ハルヒ(の力を盗み出した長門)と古泉の策で、長門は望むとおりの新しい世界を作り出した(消失)
- ハルヒの力はその後、ハルヒ自身に戻された。だが、新しい世界を作り出した事件の余波で、キョンは昏睡していた。
驚いたハルヒはキョンにキスしたが、(サムデイインザレインの時と違って)キョンの目はすぐには覚めなかった。
3日後、昏睡から目覚めたキョンは、自分が「鍵」である事も自覚する事となった。
その後どうなるのかは、みくるには知らされていない。この時代の人間と同じく、(「憤慨」時点の)みくるにとって未来に属する事で、誰にもわからない。
みくるの、この時間平面での重要な任務も、これで終了した。
この時代にも、みくるの時代にとっても幸福な結末が訪れて欲しいと願う
帝国云々が謎ですが、生徒会長を司馬懿に例える描写が本文にありますので、ハルヒの脚色と考えました。ハルヒの脳内では生徒会=魏、SOS団=蜀なんだろうという事で。(佐々木団=呉ですかね)でも元になった描写が朝比奈さんの記述した部分になにかあった筈だとは思うのですよね。
書いていて初めて
寝顔にいたずら書きの意味がわかりました(恥)。白雪姫に王子がキスするのはディズニー版が元ネタだっていうのもぐぐって知りました。和田慎二(スケバン刑事の人です)のアリス漫画に騙されてたなあ。これも、照れ隠しでハルヒが「キスした」を「りんごで殴った」と修正したと考えました。
いささか不親切だとは思うので、上記にすこし解説を加えます。(重度ネタバレします。原作描写、「分裂」の描写あり。)
以下の解釈は重大な穴があります。まあ妄想的解釈だという事でご理解ください。
「アニメ版オリジナル」と書いた所以外は原作の描写です
「白雪姫」=ハルヒのアナロジーを言い出すのは朝比奈さん(小)にとってはこれが初めてです。
この時点から、彼女にとっては未来の事件でもある(つまり、朝比奈さん(大)になってから再びこの時空に帰ってくる)「憂鬱」につながってゆくわけです。この描写がみくる自身にとっても「涼宮ハルヒ」シリーズにとっても重要なターニングポイントになってくるだろう事は容易に予想できます。
「殴る」が「キスする」の置き換えだとする、この解釈が正しいとすると、「憂鬱」と「消失」は対になる構造だという事になります。つまり、
「憂鬱」 : キョンがハルヒにキス→ハルヒ(とキョン)は超常(閉鎖空間)から日常に回帰する
「消失」 : ハルヒがキョンにキス→キョンは日常(的な消失世界)から超常(的な日常)に回帰する
です。キスしたほうの世界に帰ってくるわけです。日常と非日常のせめぎあいを描くこの作品にとってこれが重要なモチーフであるなら、ラストに向けてもうひとひねりありそうな気がするのは私だけではないでしょう。
さて、「寝顔にいたずら書き」ですが、これは複数の作品に登場します。
「わかったよ。寝顔にイタズラ描きされたくなかったら、お前より早く寝るなってことだろ? その代わり、俺が前より遅く起きていたらお前の顔に髭くらい描いてもいいんだろうな」 「なによそれ。あんたそんな子供みたいなことするつもりなの?」孤島症候群
7月です。起きると目の前にいるのは朝比奈さんで、アニメ版ではこの台詞はありません
ハルヒはぐうすか眠っている。その寝顔は、イタズラ描きをしたくなるほどさまになっていた。エンドエスエイト
8月です
「ぅおわ!」
ううん?
「ああ、あ、うう…」
おまえだけか?
「なによ、悪いの?!」
悪くはないが……お前、俺の顔にイタズラ書きとかしてないだろうな
「しないわよ、そんな幼稚な事」サムデイインザレイン
12月、アニメ版オリジナルです。
寝顔にイタズラ書き……ではない。それもまた、別の機会でいいだろう。これから何度だって来るさ、そんなチャンスはな。消失
12月。このすぐ後に
あんた、あたしの顔にイタズラ書きしてないでしょうね
したかったけどさ。
同じモチーフを繰り返して強調します。
だんだんイタズラ書き
の意味が変わってくる事にお気づきでしょうか。
「消失」での二人の台詞イタズラ書き
の間には、ハルヒがキョンにほほをつつかれて目をさまし、あわてて起き上がる描写があります。
ファンなら誰でもしっている……ぉが?
ですね、なんでこんなにあわてるのでしょう。勿論二人が了解している意味で「顔にイタズラ書き」されたと思ったからですね。
アニメ版では、起きると目の前に朝比奈さんがいる「孤島症候群」での描写を避けて1対1の「サムデイ」で描写しています。ここでハルヒがこんなに慌てているのは、カーディガンを掛けてあげた事を知られたから、じゃないでしょうね。2人共これを覚えていたから消失での描写に繋がってくる、という伏線でしょう。朝比奈さんの童話で補って考えると、「キスすれば、雨が降った日の部室と同じようにすぐ目をさますかもしれない。ううん、これはおまじないよ!」--「やっぱり駄目、なんで!!」(この描写は本サイト管理者の妄想です)という訳
「キスすると相手が目を覚ます」のはハルヒの特殊能力なのかどうかは解りませんが、これが重要なモチーフになっていると解釈するのには相応の理由があると考えておかしくはないと思います。
さて、多少横道にそれますがキスにかかわる描写はもう一つあります。「記憶しない」です。
あなたが前回、涼宮さんとともにあちらの世界に行ったとき、どうやって戻ってきましたか?」
だからそれを思い出させるな。退屈
その夜、すっかり前後不覚になった俺は古泉に付き添われてベッドに辿り着くことができたようだ。(略)他にも俺はハルヒとともに何か恥ずかしい醜態を演じていたようなのだが、なんせ記憶にはないし、聞かなかったことにして記憶することも拒否した。孤島症候群
アニメ版ではこの描写はありません。
半年前(「憂鬱」です。管理者注)に俺がしなければならなかったようなことだけは、もうゴメンだ。(略)あの時の記憶が納まっている脳細胞を抽出して燃やしたいくらいだ。ハルヒはどう考えているか知らんけど。そうやって過去の記憶をふっとばす方法を考えていた溜息
原作版「孤島症候群」でなにをしたのかはもう明確でしょう。アニメ版に無いのは、飲酒の描写はまずいと配慮してというより、やはりサムデイインザレインでの描写に一本化してモチーフを明確にしたかったから、と考えましたが、ちょっと苦しいですかね。
以下鬱展開が好きな方のみご覧ください。背景色で書きましたのでドラッグして反転して読めます。
なお、孤島症候群では、キスだけじゃないという説もあるようです。まさか他の団員がいるのに無理だろうと思うのですが、ハルヒが「キョン!あたひを部屋に連れて行きらさぁい!」と言ったらキョン自身が止めなければ誰も止められません。
それどころかその事がさらに最悪の結末を迎えたと考えるとその後に、エンドレスエイトでなぜ暴走したかとか、なぜ宿題にあれ程こだわったのか(キョンの家に上がる、キョンの親に会う事が目的)とか、なぜ「溜息」であれほど朝比奈さんを執拗にいじめ抜いたのかとか、さらにキョンを朝比奈さんの手、というかミクルビームで殺させようとまでしたのは何故かとか、「ライブアライブ」であえて朝比奈さんが映画で歌ったのと同じ格好で歌って差を見せ付けたのは何故かとか、god knowsの歌詞がより解釈しやすい(「あなた」は勿論キョンだが「ごめんね、何もできなくて」と歌う相手はキョンではない!)とか、原作後半の巻では何故ハルヒの能力が弱まって来ているのかとか、すると「分裂」の謎の少女「わたぁし」の正体はとか嫌な妄想がどんどん広がります。
「わたぁし」の正体は恐らく**(今回は抑止 また書くかもしれません)でしょうが、さらにその正体はと考えると、ハルヒにあこがれている描写からハルヒ自身の異時間同位体(約束の「謎の少女」は原作もアニメも未登場)かハルヒの子孫でしょう。
後者なんて、そんなちびうさ的展開、高橋留美子ならともかくまるでハルヒ的じゃないねと思ったのですが、ハルヒ自身がいなかった事にした相手だと考えれば、うなずけない事もありません。
どっちにせよ、アニメ版のほうが考えやすいので正史、というか、もし上の解釈が正しくても、ハルヒが能力で時間をループした上キョン妹を召還してさらにノンアルコールに改変する事で最初から無かった事にしたのがアニメ版だと考えておきましょう。
第一「古泉に付き添われてベッドに辿り着くことができたようだ」ですから上の解釈は無理でしょうね
(今回も「分裂」の描写があります。また「驚愕」の予想を含みますので最重要ネタバレ注意!)
上記の、「憂鬱」⇔「消失」構造、つまり、ハルヒが非日常、キョンが日常で引っ張りあう構造というのは解りやすいのですが、そのままでは膠着状態に陥ります。
原作後半で強調されている、キョンのモラトリアム打破=「俺はジョン・スミス」告白にどうしても向かえません。どんなにハルヒが「成長」したとしても、俺はジョン・スミスだと宣言した途端に以下のようになってしまいます。
「さあキョン、新しい世界を作るわよ」
何でそうなる、第一おまえ、朝比奈さんや長門の今までの努力を無にするのか。
「いいじゃないそんな事、今度はみんなここにいるんだし、ビッグバンよビッグバン!これ以上面白い事なんかある?」
やれやれ
これではキョンは自らのモラトリアムにいつまで経っても決着をつけられず、誰も高校を卒業できないままループし続けることになります。(どこにループの証拠があるかですって?「エンドレスエイト」を読む限り数回のループでは誰も気がつきませんし、少なくともメタレベルでは「憂鬱」発行のH15年から「憤慨」が発行されるH19年まで私たち読者は1年生の彼らが春から冬へ何回も行ったりきたりするのを四年間見続けています)
ところで、キョンは元々非日常への強い憧れを持っていました。
原作では冒頭で、夢を諦められないが現実は厳しいというモノローグ「サンタクロースをいつまで信じていたかなんてことはたわいもない世間話にもならないくらいのどうでもいいような話だが…」が長々と3ページ続いて、ページをめくるとたった1行「涼宮ハルヒと出会った。」と書かれているという鮮やかな対比で、キョン自身の非日常への未練たっぷりな生き方とそれを超克する存在である涼宮ハルヒとの対比が示されています。
また、アニメ版では、モノクロ寸前まで彩度を落とした画面で、通学路を通い、上記とほぼ同じモノローグが「そいつと、出会った」で途切れた瞬間にハルヒの自己紹介が始まり、キョンが振り向いた瞬間に彩度が正常になってハルヒのクローズアップ3連という対比で描かれています。
しかし、元々は同じように非日常にあこがれている二人なのですから、この対立にはそのままでは決着をつけられません。
この「日常」⇔「非日常」対立の「日常」部分をキョンから外部化して佐々木に持たせ、「日常(佐々木)」⇔「非日常(ハルヒ)」にしたのが分裂の構造だと思えますが、まだそれだけでは足りません。選択権はキョンに移ったものの、おそらくは二人のどちらかを選べないのではないでしょうか。
ちなみにハルヒと佐々木の対比に関してはこちらのまとめが秀逸です。「Syu's quiz brog.」
( 「憂鬱」⇔「消失」 )=( 日常⇔非日常 )=( キョン⇔ハルヒ )構造に欠けているものはなんでしょうか。もう一度ハルヒとキョンを対比してみましょう
ハルヒは非日常に憧れながら、そこにアクセスする手段を持たないままに高校生になってしまいました。彼女自身が完璧な容姿と能力を持っていても、一般的な高校生活に魅力を感じていない彼女にとってそれはヤマアラシの棘に過ぎません。彼女がキョンに会い、SOS団を結成した為に日常の中で生きる事のすばらしさを知る事になります。彼女に非日常に憧れ続けるきっかけを与えたのがジョン・スミスです。
キョンはハルヒと同様に非日常への憧れをもちながら、それを諦めきれず、日常と折り合いをつけるふりをして生きてきた為に、ハルヒのように身を守る為の棘を必要としませんでした。彼がハルヒと出会った為に自身の非日常への憧れを再確認する事になります。彼に非日常では生きてはいられないことを教えたのは佐々木です。
つまり、お互いに中学時代に、非日常/日常を教えられ、高校に入ってから日常/非日常を教えられるという対称関係で、佐々木の役目はアンチハルヒである以前にキョンにとってのジョン・スミスにあたるキャラクターなのだということです。
(以下驚愕予測。読みにくい白色で書いておきます。読んでやろうとお考えの方はドラッグで反転してお読みください)
ではジョン・スミスの正体が時間遡行したキョンであるように、佐々木にもなにか「正体」があるのでしょうか?
佐々木の正体が時間遡行したハルヒであるならば、お互いに憧れるきっかけをお互いが作った事になり、二匹のウロボロスが互いの尾を噛み合うような関係が完結することになりますが、原作ではまだそれが描かれていないように見えます。
しかしながら、佐々木がそうしたように、おそらくはキョンに誰よりも「現実」を教えられる人物が一人、以前登場しています。非日常とジョン・スミスを諦め、北高ではない学校に通っていた彼女、そしてジョンスミスに出会い非日常への扉が開いたのも束の間、ジョンに目前で消えられてしまった、という。もし彼女、つまり消失世界のハルヒが生き続けていて、ハルヒたちの世界にやって来ていたとするなら、キョンがそうしたようにいったん長門が改変した一年間より過去に戻らなくてはなりません。つまりそのままで佐々木がキョンと出会った時間軸に一致します。
時間遡行ができて、「消失」事件を知っている人物は複数います。朝比奈さん(大)は当事者ですし、朝比奈さん(小)も「童話」によると、「ずっと看病していた」にせよ、「消失」事件自体は知っていたでしょう。
以下に示すようにTFEIも自分が起動している時間平面内へなら移動できそうです。
(某二次創作SSを読んで気付きました。製作者に感謝します)
1.移動先時間平面の自分に同期申請
2.自分自身と、一緒に移動したい人物を同期先の自分に再構成させる
要するにスタートレックの「転送」ですね。
形は必要ではない。同一の情報が往復できれば充分
笹の葉ラプソディー(退屈p.118)-
にも違反しないと思います。キョンが非常脱出して消え去った直後、泣き叫ぶ長門の気配を察知した朝倉が文芸部室に瞬間移動→ハルヒ、長門、朝倉の3人で時間遡行→そのまま佐々木、橘、九曜になったという展開が燃えると思いますがどうでしょう。
藤原はどこから来たかですって?妄想ついでですが、消失世界の再改変時、自宅で寝ていたほうのキョンは18日はそのまま登校し、放課後旧校舎の階段を下りようとしている所を朝比奈さん(大)に拉致されて未来へ→朝倉に刺されたほうのキョン(「消失」の語り部のほう)はその時点ですりかえられて階段落ち→昏睡キョンは病院へ、拉致されたキョンは未来世界で藤原になったっていうのはどうでしょうか。
もう一つ小ネタを
ハルヒの手が俺から離れるには、まだ時間がかかりそうだったからさ。
-ライブアライブ(動揺p.50 この描写はアニメ版には無し)-
これを始めて読んだ時、直前の描写から、手を離したくないのはキョン自身でしょう?なんでそんな思ってもいない事を言う(モノローグですが)んだろうと思っていました。ところがこれは、
この人的危険物(ハルヒの事 引用者注)はセメントでも塗りつけてあったかのように俺の手を離れないということでもあった。
-溜息p.12-
と対応しているんですね。「溜息」は「朝比奈ミクルの冒険」を撮影する話ですから、2つのモノローグは文化祭を巡る事件の最初と最後のキョンの心境の変化を示しているのですが、「溜息」は第2巻、「動揺」は第6巻。このロングパスには気付けませんでした。
2008-08-13の記述に追記します。多分ファン諸氏にとっては重要
「サムデイインザレイン」でハルヒが目をさましたキョンに何故あんなに驚いていたのか、本編を参照すれば明らかです。TV版の予告が見られる環境にある方は次回、涼宮ハルヒの憂鬱 サムデイインザレイン
おつかれさま、キョン
の直後をボリウム最大でお聞きください。BGMとカブって聞き取りにくいのですが、聞き間違えようがありません。
何箇所か感想が書いてあるブログを回ってみたのですが、この点に言及している所を見つけられませんでした。「カーディガンを掛けたのを見られたと思った」「おつかれさまと言ったのを聞かれたと思った」ではちょっとスタッフの皆さんがかわいそうです。